注目が高まるAR(拡張現実)広告
拡張現実(Augmented Reality、オーグメンテッド・リアリティ、以下AR)は、現実環境をコンピュータにより拡張する技術です。ARを利用したアプリですと「ポケモンGo」が有名ですが、エンタープライズ、広告、ヘルスケア、自動車関連と様々な分野で今使われており、AR市場は2017 年には42.1億ドル(約4748億円)まで到達し、2023年までに605億ドル(約6兆8363億円)までに膨れ上がると見られています。
もちろん、広告業界でも、今よりもAR技術を向上させ広告に活用させる取り組みが数年前から始まっています。米国では、今年だけでもARを使った広告は130億ドル(約1兆4733億円)近くに達する見込みで、77%の消費者がARを使用して買い物をすることに興味があると回答しています。
大手ソーシャルメディアのFacebookやSnapchatは、ユーザーや広告主が何を望んでいるかを考え、改良を重ねています。Facebookは、ARで商品を試せるようなリアルな体感を強調した広告に力を注ぎ、一方でSnapchatはフィルター機能(Snapchatではレンズと呼ぶ)を豊富に揃え30才以下のユーザーからの絶大な支持を得ています。米国ソーシャルメディア各社は工夫を凝らし、AR広告の戦略リーダーのポジションを勝ち取ろうとしています。
具体的になぜAR広告が効果的なのか?
- ユーザー自身でプライベートを守りながら商品やプロダクトを試せる。
- 商品の実在感を得られる為、広告を見る滞在時間が長くなる。エンゲージメントも、もちろん通常のバナー広告より高くなる。
- 主観的な視点で商品を試せる為、ユーザーの購買意識が高まりやすい。
- 現状は、邪魔と感じにくい広告の提供が可能。
国外のAR広告の活用事例
- 米国大手コスメメーカーは、店舗に行かなくてもARで試せる広告を提供。
- 日本でも人気のMichael Kors(マイケル・コース)はサングラスをARで試せる仕様。
- IKEAは、自宅のスペースで購入したい家具が選べるAR。
- ebayでは商品にカメラを向けると配送の際に必要なダンボールのサイズが分かる機能。
現在、どの企業もARを使用したベストプラクティスを模索している段階ではありますが、すでにVRよりもARに予算を掛けたい企業は増えており、注目度は非常に高まっています。
次に、豊富なARフィルターで米国の若い層に人気のSnapchatについて解説していきます。
Snapchat(スナップチャット)
ソーシャルネット上で一番使用されているARと言えばフィルター機能です。そして、米国のソーシャルメディアでARフィルターのリーダーシップを確立させているのは、現在のところSnapchatになります。
米国でのストーリーの利用率(18才~34才まで対象)
リソース:Businessinsider
フィルターと言えば日本ではインスタが代表的で、アプリですと最近ではTikTokが人気ですが、米国では18才~34才までのGenZやミレニアルはSnapchatのストーリーを利用するユーザーがインスタの倍以上を占めています。Snapchatはアクティブ率が高く、若年層ユーザーは平均18回/日でアプリを開けており、一日の平均利用時間は約30分です。なぜ米国の若者に人気があるのか5つの特徴を紹介します。
- フィルター(レンズ)機能が充実している
- プロフィールが特定されにくい(Bitmojiというアバター作成機能がある)
- 送信した画像や動画を受信者が一度見たら自動的に消去してくれる
- 送信した画像や動画を受信者がスクリーンショットを撮った場合、送信者に通知される
- 利用者が若いので、世代に合ったクリエイティブを提供
Snapchatは、広告にもフィルターを使ったケースが多く、成功事例も沢山あります。EC、大手飲食チェーン、ブランド、あらゆるアイデアとARを組み合わせキャンペーンを実施しています。またARとは別の話しになりますが、Snapchatの広告はスワイプするとアプリストアが表示されて、インストールまでのステップが少ないのも特徴です。若い層やテクノロジーに強いユーザーからのアプリインストールを増加させるのには、米国ではSnapchat 広告は最適とも言えます。
Snapchatの有名なAR広告
伝説となっているジョーダンのプレイを等身大サイズで好きな場所に投影できるレンズをリリースし大反響になった、エアジョーダンxSnapchatxShopify(ECプラットフォーム)xDarkstore(EC専用物流)のキャンペーン。対象スニーカーは僅か23分で完売という快挙。
まとめ
米国企業のAR広告への関心は強く、各企業やブランドのベストプラクティス(ケーススタディ)を確立させようとしています。すでにVRよりもARに予算を掛ける企業が多く、その流れはこのまま続くと予想されています。
今年の11月には、「ポケモンGo」で知られるARゲーム企業アイアンテックが次回作「ハリー・ポッター:魔法同盟」を公式サイトで公開しました。来年のリリースを予定しており、世界中のハリポタファンから大きく注目されています。
見る広告から仮想で体感できる広告へ。モバイルの性能が高まるのと並行してAR広告は今後さらに消費者にとっても広告主にとっても魅力を増していくことでしょう。