アドイノベーション株式会社

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ECサイトの広告ビジネス4
~Amazon、ZOZO、楽天、ヤフーの広告ビジネスの現状をまとめました~

2018.12.10

第4弾:楽天の広告ビジネス

シリーズでお送りしています「ECサイトの広告ビジネス」ブログ。第4弾は楽天の広告ビジネスについてです。

2017年7月に電通と合弁でデジタル広告会社「楽天データマーケティング」を設立した楽天は、その「楽天データマーケティング」のCEOにGoogleの日本法人の代表取締役を務めた有馬誠氏をむかえ、広告ビジネスの売り上げを増やし市場のトップを狙うべく舵をきっています。

1997年に「楽天市場」を開始した楽天は、今や70を超えるサービスを展開し、世界で12億人以上のユーザーが利用している巨大なエコシステムを構築しています。

2018年6月現在の楽天の国内EC流通総額は年間約3.4兆円、「楽天市場」の店舗数は46,000以上となっています。なお、今年の広告取扱額は約600億円となる見込みです。ただし、この広告は大半が「楽天市場」の出店者によって出稿されているため、今後2021年までに「楽天市場」出店者以外の外部広告主の割合を40%まで伸ばすことを目指しています。

では、実際に楽天はこのゴールを達成するために、どのような取り組みをしているのか、具体的に調べてみました。

まず、企業が「楽天市場」内にブランドサイトを設置できるマーケティングツールを販売しています。これは「RMP-Brand Gateway」と呼ばれるもので、企業は自社のホームページを楽天サイト内に作成したり、移したりすることができます。また「RMP-For Brands」というツールによって各種分析をほぼリアルタイムに見ることができ、「楽天市場」内のサイトに訪れたユーザーのプロファイルや購買履歴を活用した広告出稿が可能です。「RMP-Customer Expansion」では、AIのマシンラーニングを使用して購買見込みユーザーを探し出し広告を配信します。

(リソース:Rakuten Marketing Platform navi)

さらに、楽天はCPC(Cost Per Click)ではなくCPP(Cost Per Purchases)という仕組みを整えています。楽天の広告配信プラットフォームに広告を出稿すると、「楽天市場」を中心に配信します。加えて、他の媒体を使用するケースでもクリックを「楽天市場」の商品紹介ページにリンクさせ「楽天市場」での購入につなげる仕組みになっています。このため、購買に至ったかどうかが明確にわかるのです。広告面はすべて楽天のコントロール化にあるため、ブランドセーフティーにも大きなメリットがあるといえます。

このようなアプローチを可能にするのは、約9,900万人の楽天会員IDと実際に買った情報に基づく購買データという豊富で質の高いデータと、100名単位のデータサイエンティストを抱える研究所の存在です。

購買データに基づく広告配信は、広告主にとっては広告効果を上げるだけでなく、アドフラウド対策やブランドセーフティーの点においてもメリットが大きく、安心・安全かつ収益拡大も見込んだデジタルマーケティングが可能です。また、ユーザーにとっても自分にとって関心のある広告だけを見ることができるという大きなメリットがあります。

また、楽天は、ネット広告とテレビCM、ECサイトと実店舗での購入をすべてIDでつないで広告効果を把握するこころみを始めています。もう少し、楽天のエコシステムを詳しく見ていきましょう。

楽天カード

オンラインのみではなく、オフラインでも頻繁に使用されており日本一の取扱高になりました。「楽天ペイ」も含め、楽天IDとPOSデータの連携による決済手段はどんどん広がっています。

携帯通信事業サービス+物流サービス

2019年春にMNO(携帯通信事業)サービスも開始します。さらに、「ワンデリバリー」という出荷から配送、送り届けるところまですべて楽天が行うという物流サービスにも積極的に投資しています。

Rakuten TV

オンラインでスポーツや映画、ドラマ、アニメなどの動画を配信するサービスです。現在は、日本限定となっています。テレビがネットにつながることにより、秒単位で視聴データを得ることができるようになります。そのため、広告を配信した場合、実数でリアルタイムに近いスピードで効果測定が可能になります。

実店舗

パートナーになっているコンビニエンスストア、ドラッグチェーンストア、飲食店などから店舗購買データを収集できます。

上記のような様々なサービス・取り組みから楽天のマーケティングプラットフォームには、ますます高品質なデータが増えていくと考えられます。

今年の9月には、アメリカのサンフランシスコでカンファレンスを開催し楽天事業の紹介をするなど、世界への広告展開を視野に入れている楽天。広告ビジネスでも非常に大きな可能性を秘めているといえそうです。

シリーズ最終回は、ヤフーの広告ビジネスについてです。