ECサイトの広告ビジネス2
~Amazon、ZOZO、楽天、ヤフーの広告ビジネスの現状をまとめました~
第2弾:Amazon広告ビジネスのグローバルにおける現在
ECサイトの広告ビジネスブログ・第1弾でもお伝えした通り、米国におけるAmazonの2018年の広告収入は、前年比144.5%増の約46億ドル(約5200億円)となる見込みで、Google、Facebookに続き、デジタル広告収入シェア第3位となりました。日本では、2018年8月にニールセンが発表した調査結果によると、4,079万人が「Amazon」を利用しており、さらに、「Amazon」、「楽天市場」の利用者の70%以上がスマートフォンのみで利用していることも明らかになりました。
今回は、米国におけるAmazonの広告ビジネスの現状を、もう少し詳しく見ていきましょう。
最新の調査によると、米国ユーザーの70%がAmazonでウィンドウショッピングをするというデータがあり、約80%の買い物客が新しい商品やブランドを発見するためにAmazonを使用しています。
今まで多くの消費者は、まずGoogle検索で商品探しを始めていました。しかし、最近では初めからECサイトで商品を検索するようになってきています。この流れを追従するかのように、ロレアル(L’Oreal)やフィリップス(Phillips)などの世界的な大企業が、今までGoogleの検索広告に投入していた予算の一部をAmazonのマーケットプレイスへ移行させています。
米国のデジタルマーケティングエージェンシーiCrossing(アイクロッシング)によると、2018年に彼らのクライアントがAmazonに出した広告出稿量は前年比で9%から295%幅で増加したとのことでした。
下記のeMarketerによる資料をご覧ください。2018年現在の米国では、デジタル広告ビジネスの2強、GoogleとFacebookがシェアの57.7%を占めており、Amazonは第3位とはいえ4.1%のシェアです。しかし、2020年の予想ではAmazonのシェアは7%まで上がることが予想されており、今後ますます急拡大していくことが考えられますが、その理由は何でしょうか?Amazonの広告ビジネスの強みを検証してみました。
(リソース:eMarketer)
Amazonの広告ビジネスにおける強み
1 本業の成長
2017年度の米国での年間収益は1780億ドル(約19兆8500億円)でした。また2018年の9月には株式時価総額が1兆ドル(約111兆円)に到達。これは米国の上場企業の中でAppleにつづく快挙です。このようにAmazonは数少ない右肩上がりのチャネルであるため、例えば、消費財メーカーなどは成長を維持するためにもAmazon広告に依存する傾向すら徐々に見え始めています。また実店舗ではなかなか店頭に並べてもらえないようなスタートアップ企業の新しい商品などもeコマースのスペースであれば、プロモーションの機会はたくさんあります。そのため、Amazonのプラットフォームでマーケティング活動をする新しい企業も急増しています。
ケーススタディ
Baiのeコマースマーケティング戦略、ネイチャーラボ、Diageo
2 多様化する事業
Amazon Go
今年の1月にシアトルで1号店がオープンして話題になった無人の食料品店舗「Amazon Go」は、9月には早くも4号店をシカゴでオープンしました。「Amazon Go」で買い物をする人は専用のアプリをダウンロードし、入店時にアプリをスキャンすればレジで会計をする必要がなく、購入したい商品を手に取って店を出るというシンプルな仕組みです。店内にある3DカメラとAIで顧客の行動や商品、決済を管理します。現在では、オムニチャンネルなどECサイトと実店舗の情報管理システムを統一し顧客をフォローするマーケティング手法が活用されていますが、AmazonのECサイトが保有する、もともと豊富で品質の高いユーザーデータに加え、こうした実店舗における顧客の実際の購買データが加われば、オンライン・オフライン双方の購入に非常に効果的な広告を出すことが可能になるでしょう。
Amazon Spark
Amazonは今年7月に独自のショッピングSNS「Amazon Spark」を米国のみで提供を開始しました。これは、Amazon自身がユーザーにとって商品を認知したり、口コミを見るためのプラットフォームになってきている中で開始されたサービスであり、「Instagram」のように特定ユーザーやジャンルのフィードを閲覧したり、コメントなどで交流することが可能です。また、投稿された画像からAmazon内でのショッピングページへアクセスし、該当商品を購入することもできます。まだ開始されたばかりのサービスですが、今後の動きに注目してきたいところです。
Prime Video
OTT TVでの広告がますます注目を集めています。NetflixやHuluなどのストリーミングサービスを使用するユーザーが増えてきており、マーケターは新しい広告の機会を狙っています。Amazonも「Prime Video」を補完する広告収入型の無料サービスを準備しているという話があります。実際の視聴や動画の購入、動画の検索結果など様々なデータを保有するPrime Videoは動画広告のプラットフォームとして大きな可能性を秘めているといえそうです。現在は、Netflix、Hulu、Prime Video、どれも今はまだ広告ビジネスには参入していませんが、こちらも引き続き今後の動向から目が離せません。
Amazon Echo
米国で行われた調査では、回答者の14.2%が半年以内にスマートスピーカーを経由してAmazonで商品を購入したと答えています。また、スマートスピーカーを所有していると回答した人の約60%はAmazonのスマートスピーカーを使用していました。スマートスピーカーを経由したショッピングの売上は、2018年の20億ドル(約2260億円)から2020年には400億ドル(4兆500億円)に達すると言われています。スマートスピーカーの普及は予想されていたよりも早いスピードで進んでおり、今後はAlexaなどスマートスピーカーからの提案による商品購入が増えていくと考えられています。
ちなみに、米国ではAmazonで買い物をするユーザーの67%はパソコン経由であり、24%がスマートフォン経由です。AmazonのアプリのMAUは2016年時点で3,000万人でした。年齢別にもう少し詳しく見ると下記のチャートの通り、パソコン経由でAmazon を使用する人の年代は45歳以上が71%を占めており、モバイル経由では18歳~44歳が77%を占めています。
(リソース:cpcstrategy)
豊富な商品ラインナップと、オンライン・オフライン様々なチャネルを通じ膨大で良質なユーザーデータを保有するAmazonの広告ビジネスは、現在、インターフェースなど技術的な側面の改善も進められており、将来より大きな広告プラットフォームとなるでしょう。
このあと第3弾では、今話題のZOZOの広告ビジネスについてです。